「第22回かながわ高齢者福祉研究大会」優秀賞施設を取材(学生取材)
「第22回かながわ高齢者福祉研究大会」優秀賞受賞施設を取材
「第22回かながわ高齢者福祉研究大会」(2025年7月2日、神奈川県社会福祉協議会老人福祉施設協議会主催)において、「特別養護老人ホームシャローム」が発表した「自立排泄の重要性」に関する研究が優秀賞を受賞しました。介護現場における生産性向上と業務効率化が叫ばれる昨今、同施設の実践は「利用者の尊厳」と「職員の負担軽減」という、一見相反する課題を同時に解決するモデルケースとして注目を集めています。今回、私たちは同施設を訪問し、その取り組みと現場の変化を取材しました。
褥瘡(じょくそう)予防から始まった「尊厳」の回復
取材を通して明らかになったのは、この取り組みが単なる排泄ケアの改善に留まらず、利用者の生きる意欲そのものにアプローチしているという点です。初の目的は、深刻な「褥瘡」の予防でした。排泄コントロールの不全は皮膚汚染を招き、治癒の遅れやADL(日常生活動作)の低下ばかりでなく、食事・活動意欲の減退へとつながります。この悪循環を断とうと、シャロームでは次の2つの改革に取り組みました。
1. 姿勢保持支援機器の導入
手すりと背もたれを設置し、前傾姿勢を安定させることで、腹圧をかけやすい「出し切る排泄」を実現しました。
2. 食事による自然排便
下剤依存からの脱却を目指し、食物繊維や発酵食品を多用したメニューで腸内環境の改善を図りました。
このケアにより、長年オムツ内排泄のみであった入居者もトイレでの排泄に成功しました。「気持ちいい」という生理的な充足感が、精神的な自立支援に直結しているようです。
2ヶ月で成果 職員「続ける意味を実感」
一方で、新たなケアの導入は現場職員にとって一時的な業務増となる懸念があります。しかし、本事例の特筆すべき点は、職員自身が「継続することの価値」を実感し、自発的なケアへと転換させたプロセスにあります。プロジェクトに関わった職員の佐藤さんは、こう振り返ります。「取り組み開始後1ヶ月半~2ヶ月で、職員から「トイレで排便があった」という自発的な報告が増えた。これにより、おむつ交換や清拭の手間が減り、介護負担の軽減と精神的な安心につながりました。また朝の申し送りなどで「トイレで出た」という成功体験を共有することで、時間がないと感じる職員にも取り組みの価値が伝わり、継続へのモチベーションになりました。」
成果の実証を受けて取り組みは他フロアへも拡大し、現在では職員が入居者ごとの状態に合わせて環境を調する「個別ケア」として定着しています。
小さな気づき、そして寄り添い
現在の介護現場では、効率化が至上命題とされる傾向にあります。しかし、時間に追われて自立支援を疎かにすれば、利用者のADLは低下し、結果として介護負担が増大する「負の連鎖」に陥りかねません。シャロームの実践が示したのは、利用者に対する「小さな気づき」や「心地よさ」に寄り添うことこそが、結果として業務の効率化と専門性の向上をもたらすという事実です。「あ一気持ちいい」と感じてもらえるケアには、職員の日々の研鑽と、人間としての尊厳を守ろうとする強い意志がありました。今後の超高齢社会において、私たちが目指すべき介護の在り方が、ここにあると感じました。
※本ページに関する記事は第22回かながわ高齢者福祉研究大会にて優秀賞を受賞した施設に学生が取材を行い、執筆しています。

